願興寺聖観音レプリカ |
地蔵寺は、四国霊場86番志度寺の奥の院で、歴史は志度寺より古い。日本廻国六十六体尊仏一堂に会していることでも著名な、稀有なお寺だ。中世に日本全国六十六ヶ国の神社仏閣を巡る日本一長い巡礼があったことにちなんだもの。栗峯弘文住職のお話を伺っていると、真言宗善通寺派管長・真言宗長者である樫原禅澄猊下が駆けつけてくださった。せめて、記念写真でもとのありがたいご配慮なのだ。地蔵寺のご子息栗峯澄明師が善通寺に勤務し、猊下の秘書役をされている。しかも彼は、高野山大学加行道場での和尚の修行仲間でもあるのだ。ご縁とはありがたいものだ。本堂でご法楽の後、ご住職の法話。廻国の本尊も二体が行方不明になっていたのが、不思議なご縁で戻ってこられたという。そのエピソードは不可思議としか言いようもない。
ついで、87番長尾寺の近くにある願興寺へ。奈良時代からの古刹で、重文の脱活乾漆造・聖観音像が残されている。木組みを作り、土を捏ねて型作り、布と漆を重ねる。乾燥したら土と木組みを取り出さし、新たに木組みで補強して、さらに幾度も漆を塗り重ね、細部を仕上げる。途方もなく手間と費用のかかる造仏法なので、現存するのは近畿地方が中心で、願興寺は最も西に位置する。
平成22年に落慶した本堂で、樫原典澄住職から寺の縁起を聞く。住職も和尚と同じく定年後に修行して寺を継がれた方だ。本堂の両界曼荼羅や真言八祖像は、日本画を良くする奥様の筆になるもの。2年掛りの大作で、金とプラチナで描かれた曼荼羅は、気品に満ち、荘厳さに魅入られてしまう。観音堂を特別に御開扉していただいて、順に拝観させていただく。奈良・興福寺の「阿修羅像」などと同じ流れを汲むようで、前に座ると優しさに包み込まれ、いつまでもそこにいたい感じがする。お茶をいただきながら、同じ手法で観音像を復元するVTRを見ると、改めて凄いと実感する。
ゆっくりと堪能して、帰路についた。堺着19時。さわやかな秋風のもと、満ちた足りた一日だった。合掌
地蔵寺にて 廻国の 佛居並ぶ 秋の寺
願興時にて 観音の 微笑み嬉し 秋の風
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